種を蒔くにしても、何の種を蒔けば良いの?
最初は、迷うかもしれません。
重要なのは、その野菜が、その土地に合っているかどうかです。
そういう意味では、豆類がお勧めです。
豆類は、土地を選びません。
一年目からも良く育ちます。
では、他の野菜と、何が違うのでしょう。
大豆を、引っこ抜いてみると...
根には、小さなツブツブが、たくさん付いています。
これは根粒と呼ばれるもので、この中に菌(根粒菌)が住んでいます。
大豆は、この根粒菌から必要な栄養素を供給してもらっています。
(根粒菌は、空気中の窒素から栄養素を作りだす力を持っています)
そのお返しに、大豆(宿主)のほうも、根粒菌に必要な栄養素を与えています。
つまり、大豆と根粒菌との間に共生関係があるわけです。
大豆は、そのおかげで、免疫力もアップし、健全に生育できるのです。
私たちの健康(免疫力)が腸内細菌に支えられているのと同じです。
こうしたメカニズムは、他の野菜や雑草も、基本的には同じです。
(根粒を作らない野菜も、健全に生育するには菌の助けが必要なのです)
豆類の場合は、特に、共生細菌との関係性が緊密といえます。
つまり、豆類は、土壌の菌とすぐに仲良くなれるわけです。
でも、こうした共生関係が構築されるには条件があります。
まず、土壌が清浄でなければなりません。
施肥された肥料分が、土中に残っていると、共生関係は築かれません。
大豆は、根っこ近くにある肥料分を優先的に吸収することになります。
また、深く耕したり、農薬を撒いたりして、菌が死滅していたら当然ダメです。
このように、豆類は、土地を選ばず、育てやすいというのが特徴ですが...
それだけではありません。
特筆したいのは、食材としてのポテンシャルです。
豆は、完全栄養食とか、畑の肉と言われています。
それほどに、様々な栄養素が豊富に含まれているわけです。
おまけに、成熟した豆(乾燥豆)は、長期保存もできます。
そして、何と言っても料理のバリエーションが豊富です。
煮る・蒸す・焼くなど、どんな料理にも使えます。
サラダやスープ、カレーなど、どんな料理にもマッチします。
和菓子の材料(小豆餡や白餡・うぐいす餡・ずんだ餡など)としても、
洋菓子やパンのトッピング、豆腐や納豆・味噌・醤油など...
広範囲に、日本の食文化を支えているわけです。
でも、そんな万能食材の豆が、軽視されているのです。
そのほとんどを輸入に頼っているわけです。
そして、日本の在来種のほうは、消滅の一途をたどっています。
また、日本の種子法も廃止(2017法案成立)されました。
米や大豆など、主要穀物の種の権利が民間へ開放されることになったのです。
日本の穀物も遺伝子操作されたものに変わっていくのかもしれません。
この経済至上主義の社会では、効率化(利益)が最優先です。
利益が出ないものは、消滅の運命をたどることになります。
そんな中では、守るべきものは自らで守っていくしかありません。
人類は、種と共に、過酷な歴史を生き抜いてきました。
あの小さな体(DNA)には、そんな歴史が刻み込まれています。
種は、人類にとっての貴重な遺伝資源であり文化遺産です。
それを、未来につなげていくには、地道に自家採種を続けていくしかありません。
自らで種を蒔く、という意味も、そこにあります。
人類が生き延びるには、それしかないわけです。